Toyota Ceili Band 10th Anniversary Concert & Ceili オンラインプログラム

Let Our Heart Dance! 身も心も躍る日々を!

【ご挨拶】

2011年9月17日、初めてのケーリーが開催されました。それから10年。決して順風満帆ではありませんでした。

最初の3年間は演奏するだけで死にそうでした。
実はケーリーの伴奏はテンポがとても速く、3時間かなりの数を弾くため、通常の音楽だけのセッションよりかなりハードルが高いのです。
踊りやすいリズムをつくるのにも苦労し、試行錯誤を重ねました。

伴奏がある程度軌道に乗ってくると今度はダンスの新規参加者が定着しないという問題が起こりました。
2ヶ月に一度の定例ケーリーが開催されない月には”Shall We Irish Dance?”という初心者向けのワークショップとコンサートをセットにしたイベントを開催しましたが、ワークショップと通常のケーリーのギャップが大き過ぎて、ここできっかけを得た方がケーリーに踊りに行って挫折してしまうということが多発しました。
何年も悩みましたが、最終的に今回ダンスのプロデュースを一手に引き受けて下さっている寺町靖子さんが、ベーシックとなるステップを丁寧に繰り返すという時間のかかる地道なやり方にワークショップ自体を方向転換し、さらに会場が閉店になって幕を下ろした”Shall We Irish Dance?”を引き継いで、”アイリッシュダンスの寺子屋”というワークショップを定期的に開催して下さったことで社会人の定着率が大幅に向上しました。

並行して2010年に学生と共に立ち上げたIntercollegiate Celtic Festivalでも、講師を務められている寺町さんがワークショップを改革。
結果数年後には若者の中で熱狂的にダンスにハマり込む層が生まれ、本国アイルランドも驚く若者の参加率となりました。

そんな大きな流れが来ていたところに起きたのが新型コロナウィルスの蔓延だったのです。
グループで踊るセットダンシングは、大勢が密室に集まり直接触れ合うという3密中の3密とも言えるような状況になるため、壊滅的な打撃を受けました。
実際、2020年3月15日のパブケーリーを最後に今日まで大規模のケーリーは一度も開催されていません。
学生のアイリッシュ音楽とダンスのサークルもその多くがオンラインのみとされ、中には長年の歴史に終止符を打つという痛ましいケースさえありました。

そんな状況で本日のこのイベントを開催するのは正直大変勇気が要りましたが、幸いにも奇跡的な位良いタイミングで感染者数が激減し、無事開催できて皆様にお目にかかれることになりました幸運を喜ばずにはいられません。
まだ先行きは不透明ですが、今日この日が復活の狼煙となり、次の10年を皆様と共につくっていけることを心から願っております。

本日はご来場、ご視聴、本当にありがとうございます。
どうぞごゆっくりお楽しみ下さい。

Toyota Ceili Band 代表 豊田 耕三

【プログラム】

-1st stage-

①Slow Air / Slip Jig+Modern Style Step Dance

<Slow Air>
O Raghallaigh’s Grave

<Slip Jigs>
The Night Before Larry Was Stretched / Garech’s Wedding (composed by Paddy Moloney) / Farewell to Whalley Range (composed by Mike McGoldrick)

Dance:堀内はな Hana Horiuchi (Ardagh School of Irish Dance)

Slip Jigの2曲目《Garech’s Wedding》は、先月亡くなったイーリアン・パイプス奏者で国宝級バンド チーフテンズThe Chieftainsのリーダー、パディ・モローニー氏によって作られた曲です。哀悼の意を込めて。
メドレーの最後の曲で登場するのは、3種類に分類されるソロダンスのうち、最も新しく、最も技術的に高度なモダンスタイルステップダンス(Modern Style Step Dance)。肉体的な負担がとても高く、コンペティションに参加するトップレベルのダンスともなると、ティーンエイジャーの間にピークを迎えてしまうとさえ言われています。日本でも10代のダンサーの活躍は目覚ましく、そのレベルの高さは目を見張る程です。ここでは女性にしか踊られることがないSlip Jigのリズムで、ソフトシューズを履いて妖精のように軽やかに踊るダンスを披露します。


②Accordion Solo → Sean Nos Dance Medley

Galway Rambler / O’Rourke’s / Concertina Reel / Lafferty’s

Dance:青木聡尚 Satoshi Aoki → 宮本豪 Tsuyoshi Miyamoto → 城拓 Hiroshi Jo

3種類に分類されるソロダンスのうち、最も古いのがこのシャン・ノース(Sean Nos)。即興的にステップを並べていくことが主体で、新しいダンスに比べて上半身も自由。今回は、中堅、ベテラン、若手3人の男性陣がリレー形式でダンスを披露します。


③Set Dancing

<Borlin Set F3 Polkas>
Taur polka / Newmarket

*2nd Album “Seven More”収録曲

Dancers
1st Top :宮本豪 Tsuyoshi Miyamoto 、宮本雪華 Yukika Miyamoto
2nd Top: 寺町靖子 Yasuko Teramachi、伊藤礼 Aya Ito
1st Side: 城拓 Hiroshi Jo、俵藤あかり Akari Hyodo
2nd Side: 青木聡 Satoshi Aoki、龍岡まりこ Mariko Tatsuoka

ボーリン・セット(Borlin set、またはBorlin Valley Polka setとも呼ばれます)はポルカやスライドのリズムよく演奏されるアイルランド南西部地方のセットです。8人1組で踊るセットダンスは、いくつかのダンス(フィガー)を順番に踊っていくのですが、ボーリン・セットには5つのフィガーがあり、今日はその3番目(第3フィガー)を踊ります。全員でJump, Kick,とポルカのリズムに合わせて音を立てるのが特徴で、とても楽しいセットのひとつです。


④O Luaidh

Vocal:権藤英美里 Emiri Gondo
Arrangement:権藤英美里 Emiri Gondo

TCBとしては初の試みとなる歌もの。現地ではダンスやセッションに並んで大切に継承されている文化の一つで、ケーリーバンドのアルバムに収録されていることも多いです。
「歌もの」と一言で言ってもその種類は多岐に渡りますが、今回は私(権藤)の大好きなスコットランドのラブソングから一曲選びました。
今や「英語詞なら聞き取れる!」という方も多いかもしれませんが、今回の曲はそうは問屋の卸さぬ、スコティッシュ・ガーリック詞です。ここで言う「ガーリック」はにんにくではなく、アイルランドやスコットランドの古来の言語である”ゲール語(Gaelic)”のスコットランド風発音。英語が公用語となった現在はごく一部の地域でしか話されていませんが、伝承されてきた歌の中では今も美しく生きています。決して権藤がデタラメを歌っているわけではありませんのでご了承ください。
題名の《O Luaidh》(読:オールィー)は英語でいう”Oh love”。「ああ、愛する人よ」という大変ストレートなタイトルです。
曲中の語り手である男性が、ピート(泥炭)の上で働く美しい少女に恋をし、彼女への愛を誓いますが、二人は最後まで結ばれることはありません。
3番まである歌詞の合間に何度も歌われるサビの部分では、

 ”ああ、愛する人よ、僕たちは決して結ばれない
 なんて哀しい問いだろうか
 君に出会う前に墓に入っていられたら?とさえ思ってしまう
 ああ、愛する人よ

という胸の張り裂けそうな想いが語られています。
アレンジは、Coigというバンドの演奏を参考にしながら、TCBオリジナル版にしました。


⑤Old Style Step Dance (Set Dance) 

Job of Journeywork

Dancers
金塚多佳子 Takako Kanezuka、俵藤あかりAkari Hyodo、丸田智子 Tomoko Maruda、山下理恵子 Rieko Yamashita、寺町靖子 Yasuko Teramachi(CCÉ Japan)

3つのソロダンスのうち、時代区分で真ん中に位置するのがオールドスタイルステップダンスOld Style Step Dance。手の動きは止められ、ステップもシャン・ノースに比べてかっちりしてきます。音がはっきりしていて、テンポも程よく、伴奏する演奏者目線では最も音楽的と感じられるダンス。即興的要素が残っているものもあり、ダンサーがまるで打楽器奏者のように伴奏者に絡んでいくことも。
今回は”Job of Journeywork”というセットダンスを踊ります。前半はモーリス・オコナー(Maaurice O’Connor)からダン・フューリー(Dan Furey)、そしてセイリーン・タブラディ(Ceilene Tubridy)へと受け継がれてきたステップ、後半はセイディ・ケーシー(Thady Casey)からパトリック・オデイ(Patrick O’Dea)というダンシングマスター達によって伝えられてきたステップをメドレー形式で踊ります。
セットダンスという名前は、本日も登場する8人1組で踊られるグループダンスと混同されることがあるため、グループダンスの方を敢えてセットダンシングと呼んで区別することがあります。


⑥Fiddle Soli → Door Dance

Jig → Reels
The Mooncoin / John Stenson’s / Martin Wynne’s No.3

Dance:ダンサー全員

ジグからリールへのメドレー。後半、ダンサー達が登場します。
アイルランドではお祭りやケーリーの余興などで“ドアダンス(Door Dance)”が踊られることがあります。家や納屋のドアを外して床に置き、その四隅にビールを満たしたグラスを置きます。そのドアの上で踊り、ビールをこぼさずに踊れる人が名人という訳ですが、これはなかなか難しく、時にはグラスごと倒してしまうことも。それもまた一興なのです。(コンサートでは、もったいないのでお水を使います!)
アイルランドではこの他にもホウキを使った“ホウキダンス(Brush Dance)”のような余興的ダンスがありますが、身の回りの日用品などを使うところに素朴なアイルランドらしさを感じます。


⑦September Steps

Composition:豊田耕三 Kozo Toyota

旋律奏者がたくさんいる大きな編成が活きる、しかもクラシック音楽出身者のバックグラウンドを存分に活かせる曲を散々探しましたが、見当たりませんでしたのででっちあげました今回のコンサートのために書き下ろしました。
Intro – Aメロ – Bメロ – Cメロ – Outroというシンプルな形式ながら、繰り返しを経るごとにハモリと対旋律が複雑に絡み合うという通常のアイリッシュ音楽では考えられないような構成になっています。しかも、Bメロには「音名象徴」と言って、文字列を音に変化した部分があり、”Toyota C E Ili B An D For D An C Ers” = “Toyota Ceili Band for Dancers”という言葉が隠されています。

2011年の9月に開催された第1回目のケーリー、そこからの10年は決して順風満帆ではなく、紆余曲折、試行錯誤の連続でした。それでも少しずつ良くなっていくことを信じて歩んできたその歩みに、アイリッシュダンスで最も重要なステップの意味を重ね、さらに某有名作曲家の作品名になぞらえて『September Steps』と名付けました。


Finale

<Solo set(Drum solo – Flute Soli – Solo回し)>
Jolly Tinker

<Modern Style Step Dance>
Glass of Beer

Dance:堀内はな Hana Horiuchi (Ardagh School of Irish Dance)

<Set Dancing>
Connemara set F3 Reels
Noon Lasses / Bucks of Oranmore / Connemara Stocking

*2nd Album “Seven More”収録曲

Dancers
1st Top :宮本豪 Tsuyoshi Miyamoto 、宮本雪華 Yukika Miyamoto
2nd Top: 山下理恵子 Rieko Yamashita、金塚多佳子 Takako Kanezuka
1st Side: 城拓 Hiroshi Jo、寺田まり子 Mariko Terada
2nd Side: 青木聡 Satoshi Aoki、龍岡まりこ Mariko Tatsuoka

1部のラストはドラムソロ、フルートソロ、ソロ回しから始まり、モダンスタイルステップダンスが再び登場。最後はセットダンシングの中でも特にダンサーに人気が高いコネマラセットのフィガー3で華やかに締めくくります。
コネマラ・セット(Connemara set)はその名の通り、アイルランド西部のコネマラ地方のセットです。ダンス名人達はセットダンスでもリズミックにかかと、つま先を使って小気味良い靴音を立てながら踊ります。これをバタリング(Buttering)と言います。独特の“コネマラ・ステップ”はシャンノースでも使われるステップですが、当然コネマラ地方のセットダンスで良く使われます。
(今回のコンサートでは、クレア・スタイルのバタリングも使われる予定です)
ダンスやステップについて、疑問や質問がありましたらコンサート終了後や2部のダンスの合間などに、お気軽にダンサーにお声をかけてみて下さい。新しい仲間はいつでも歓迎です!

————-<休憩>————-

-2nd Stage-

スペシャルゲスト スピーチ


<Borlin Set>

F1 Polkas
Many a wild night / Walsh’s

F2 Polkas
Taureen derby / Rattlin’ bog

F3 Polkas
Taur polka / Newmarket

F4 Slides
Scartaglen / Liz Kelly’s

F5 Hornpipes
King of fairies / Taylor’s twist


<Connemara Set>

F1 Reels
Miss Thornton’s / The Boys of Malin / Jenny’s Chickens

F2 Reels
Farewell to Connaught / The Green Fields of Rossbeigh / The Earl’s Chair

F3 Reels
The Noon Lassies / The Bucks of Oranmore / Connemara Stockings 

F4 Polka
Maggie in the Woods

*2nd Album “Seven More”収録曲


<2 Hands Dance>

Reels
Down The Broom / Cregg’s Pipes / Cooley’s / Wise Maid etc.

*1st Album “Gathering Cloud”収録曲


<BB Jig Set>

Slides
F1
Mary Willie’s
F2
The Priest
F3
Gleanntan Frolics
F4
Quarry Cross / This is My Love, Do You Like Her?
F5 
Michael Russell’s

*1st Album “Gathering Cloud”収録曲


<Plain Set>

F1 Reels
Mountain Dew (Joe Cooley’s Morning Dew) / Fox on the Town

F2 Reels
Glen Allen / Drowsy Maggie

F3 Reels
Hunter’s House / Killavil reel / Limerick Lasses

F4 Reels
Miss Johnson / Honeymoon reel / High Reel

F5 Jig
Kilfenora Jig

F6 Reels
Music For A Found Harmonium / Ash Plant / Silver Spear


【出演者】
Toyota Ceili Band
Flute:豊田耕三 Kozo Toyota、須貝知世 Tomoyo Sugai
Fiddle:沼下麻莉香 Marika Numashita、権藤英美里 Emiri Gondo
Accordion:田中千尋 Chihiro Tanaka
Piano:加瀬早苗 Sanae Kase
Drum:石崎元弥 Genya Ishizaki

Dancers
堀内はな Hana Horiuchi (Ardagh School of Irish Dance)
宮本豪 Tsuyoshi Miyamoto、青木聡尚 Satoshi Aoki、城拓 Hiroshi Jo、金塚多佳子 Takako Kanezuka、寺田まり子 Mariko Terada、寺町靖子 Yasuko Terada、宮本雪華 Yukika Miyamoto、俵藤あかりAkari Hyodo、丸田智子 Tomoko Maruda、山下理恵子 Rieko Yamashita、龍岡まり子 Mariko Tatsuoka、俵藤あかり Akari Hyodo、伊藤礼 Aya Ito

音楽監督、制作:豊田耕三 Kozo Toyota
広報:田中千尋 Chihiro Tanaka
チケットマネージメント:沼下麻莉香 Marika Numashita
映像編集:石崎元弥 Genya Ishizaki
英訳協力:権藤英美里 Emiri Gondo
制作協力:加瀬早苗 Sanae Kase

舞台監督・演出・ダンサーマネージメント・Webデザイン・制作協力:寺町靖子 Yasuko Teramachi

音響:原田豊光 Toyomitsu Harada
配信協力:増田久未 Kumi Masuda
写真撮影:深堀瑞穂 Mizuho Fukahori
衣装(女性演奏者のみ):豊田まり Mari Toyota

主催:Toyota Ceili Band
後援:アイルランド大使館
協力:CCÉ Japan、THE MUSIC PLANT